繋や

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先頭の旗で答えがもらえないなら、次はもちろん無いだろう。 初回千円の鑑定料で、以後の料金をとらずに、涼花の毎日の訪問を許している。 で。 で、だ。 どうしてるんだろう? 単純に考えを巡らしても、到底利益をあげているとは思えない。 生活は? 「冷めるわよ?」 「え?あ、はい」 ほのかに薫る梅昆布茶が、七分ほど入った湯呑みを冷ましながら、考えは延々と続いていく。 樹木が天を仰ぐように、疑問は枝葉を茂らせてゆく。 でも枝打ちされてしまった。 美味しいはずのおやつも、息抜きのはずのティータイムも、いまや悶々とした時間に変わり果てていた。 「これはね柚子がまぶしてあるみたいなの。美味しいわよ?」 香織はにこりと笑みを浮かべて、手のひらほどの煎餅をひとつ、涼花に差し出した。 涼花は受け取らずに、香織のしなやかな指を見つめていた。 「……食べない?」 「………」 答えずにすっかり冷めているはずの梅昆布茶に、涼花はゆっくりと息を吹き付け続けていた。 答えてもらえそうな質問を弾きだそうと、考えていたからだ。 差し出された柚子煎餅は視覚に映っても、涼花の食欲に届いてはいない。 手にした湯呑みの存在さえ、どうでもよくなっていた。 「涼花ちゃん?」 「はい?」 気まずい雰囲気だった。 「冷めてるわよ?」 「あ………はい」 梅の酸味だけが鼻をつく。 それを一気に飲み干した。
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