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詳細な情報に雪菜たちバスケ部の女子は、好奇心が湧いたらしい。
先輩の前世だと言われた人物を、探しあててみようということになった。
そしてそれは難しいことではなかった。
先輩の家の菩提寺にある過去帳に、その人物が記載されていたからだ。
本当にその人が先輩の前世なのか真偽はわからない。
しかし《繋や》で言われた人物の名前を過去帳に見つけたことで、一気に噂は広がった。
歴史に埋もれた誰も知らない人物という辺りに、真実がより近く思えた。
涼花はどきどきしながら、相向かいに座った女性の対応を待っていた。
「これ名刺なの、どうぞ」
「はぃ…ど、どうも」
差し出された名刺には小さなクローバーの絵が、散りばめられていた。
顔色を伺いながら、頭をさげてそれを受け取る。
香織はぷっと吹き出して、さも愉快そうに笑った。途端に涼花は耳まで真っ赤になり、うつむいてしまう。
「ああ、ごめんね。笑うつもりじゃなかったけど」
香織は席をたつと、デスクに置いてある牛の親子の民芸品を手にした。すぐにまた振り向くと、肩をすくめてみせた。
「これ知ってる?」
涼花は首を横にふった。
恥ずかしさに言葉が喉に詰まったようだった。
「張り子というの」
牛の模様が紅白になっていて、呑気そうな笑みを浮かべた親子だ。
頭を触るとゆらゆらと揺れて可愛らしい。
「愛敬があるでしょう?涼花ちゃんに似てるのよ」
微笑みに悪意はなく、むしろ好意を向けられているようだった。
香織は張り子を戻すと、再び椅子に座った。
(あれ?あたし名前言ったかな……?)
「さてと。はじめましょうか」
アップルティーを勧めると、砂時計を逆さまに置いた。
緑に色づけされた砂が、微かな音をたてて零れはじめる。
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