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「……ふぅ」
大きな息をつくと、背もたれに寄り掛かる。
「……あのぅ」
「お茶飲んでいい?」
香織がもてなしの為に用意したアップルティーに「…どうぞ」と言うのもおかしな感じだった。
角砂糖を溶かしてふた口ほど飲むと、また大きな息をついてみせた。
「さてと。……これから話すことは涼花ちゃんの前世のこと」
こくりと頷くのを真面目に見つめて、話しは続いた。
「1962年の3月18日に亡くなった河合裕子さんが、涼花ちゃんの前世ね」
「………は?誰?です?」
「かわいゆうこさん、ね。1962年の3月18日に亡くなったの」
はいそうですかと相づちを打てるはずもなく、涼花はただきょとんとしていた。
「転生が早いのは、《魂の絆》の関係みたい」
どう答えていいのか、質問していいのか分からない。
とりあえず黙って聞くことに撤した。
「《魂の絆》に学びが必要で、涼花ちゃんも相手も、前世で学んでる途中に亡くなってるわ」
時折カップに手をのばしながら、香織は表情をかえずに続けた。
「相手との関係のなかで、自分の感情を冷静に見つめて、対応を考えるように心がけてね」
「…相手、ですか」
「そう。涼花ちゃんは、頭で考えて動くよりも、直感で動くでしょう?」
涼花は首を傾げた。
自分がどんなタイプの人間なのか、冷静に見つめたことはないし、必要に迫られたこともない。
正直なところ、わからなかった。
「いまの人生は前世で学びの途中だった《魂の絆》を、再び学ぶためなのね。それが習得できれば、新しい学びを得ることができるわ」
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