同窓会

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「それでは長い挨拶もここまでに」 注目を集めながら、今回の同窓会の企画者、遠野衛はビールが注がれてジョッキを掲げた。 それに合わしてクラスのみんなもジョッキを持った。 「12年ぶりの再開を祝い、乾杯!」 「「乾杯!!」」 かーんと心地好いジョッキ同士が当たる音が響くと、一斉にビールに口をつけた。 その各々の飲みっぷりがあの頃から随分年が経ったことを感じさせた。 社会人となり、今日の仕事の疲れをとるように飲み干したビールのおかわりをもらうと、そこからしょうもない雑談が始まった。 そうしながら盛り上がる会場の中、岡本拓海は一人で部屋の端でビールを飲んでいた。 「・・・・・・」 ただ無言でジョッキを空にし、テーブルに乗せられた色鮮やかな食事に箸を運んでいた。 同窓会、っていう場面なのだから、もっと思い出や今の生活について語るべきなのだろう。 しかし、拓海にはみんなのように誇れる職業に就いていなければ、笑って語れる過去もなかった。 ただ、思い出す度に悲しくなるだけの過去しか持っていなかった。
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