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「拓海、一人で何を黄昏てるんだよ」
そう言いながら、少なくなっていた拓海のジョッキにビールを注ぎながら斎藤栄仁は拓海の隣に座った。
拓海はむすっと一言お礼を言って栄仁が向けてくるジョッキに自分のものを軽く当てた。
「拓海はみんなみたく盛り上がって話さないのか?」
栄仁は拓海が一人で食べていた食事に箸を伸ばしながら尋ねた。
「ああ。俺はそんなに話すことないからな」
「勿体ないな。でもたまにするしょうもない雑談が楽しく感じるもんだぞ」
栄仁は箸でみんなが集まる席を指しながら言った。
「なら行ってこいよ。俺に構わずさ」
拓海のそんな素っ気ない一言に栄仁は苦笑いをした。
そして、月日は本当に人を変えるんだな、と実感していた。
12年前なら、あの席の中心には拓海がいただろう。
乾杯の掛け声も拓海だっただろう。
そんな変化が親友であった栄仁の心をどこか虚しくさせた。
そんな栄仁の心を感じてか、周りの友人に軽く挨拶を済ませて水上美樹は2人の所に行った。
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