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ぼんやりとした視界の中で、いつものように暖かくて大きな手が私の額に翳される。
優しい匂いのするそれは、私の前髪を2、3度撫でて頬に添えられた。
お父さん。と暖かい手の主を呼んでみる。
「ん?」
低い響きで相槌が返ってくる。
「今夜はお話をしてくれないの?」
お父さんは少し困った風な顔をして、また私の髪を撫でた。
「今日はもう遅いから、明日にしような」
え-。私はそう言って、ぷくっと頬を膨らます。
お父さんはクスクスと笑いながら立ち上がり、部屋の電気に手をかけた。
「おやすみ、マナ」
ぱちん。という音が私を闇の中へと連れていく。
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