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今日もまたお父さんは私の髪を撫でる。
お父さんの手は大きくて暖かくて優しい匂いがする。
「よしマナ。そろそろ寝なさい」
お父さんは小さく微笑んだ。
「まだ眠くないもん」
口元まで毛布を引き上げ上目使いでお父さんを見る。
お父さんはちょっと困ったように笑って私を見た。
お父さんは私がわがままを言うといつもこうやって笑うのだ。
「いいから、早く寝なさい。明日は…お話を聞かせてあげるから。な?」
私がしぶしぶこくんと頷くとお父さんは立ち上がった。
行かないで。
そう言おうとしたけれど唾が絡んで上手く言葉にならなかった。
言い直そうとしたけれど思い直してその詞を飲み込む。
「おやすみ、マナ」
お父さんがスイッチに手をかける。
ぱちん。
今日も私は暗闇の中に閉じ込められる。
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