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屋上
「僕、幽霊が見えるんだ!」
こう言ったのは小学三年生の時だった、と記憶している。言葉は正確ではないが、こんな趣旨の言葉だ。
帰ってくる反応は大きく分けて二種類あった。尊敬と疑いだ。
「えー、本当?すごいな!」
と
「えー、本当?嘘に決まってるよー!」
といった感じ。
小学生特有の、純粋で、思慮が浅い反応。
「俺な、昔は幽霊見えてたんだ」
こう言っていたのは中学二年生の時。同じ部活で一年間共に過ごした奴らに話した。
最初、冗談と受け取った彼らはひらひら笑い飛ばした。それに反感を覚え、真面目に論したのがいけなかった。………その日から数日間、俺は『頭に蛆がわいている残念な奴』になってしまった。「今となっては良い笑い話だ」なんて言えそうにない。
その位、酷い扱い方を受けた。
『幽霊がいる事』を肯定した考えを述べると、この世の中は『電波扱い』で対処してくる。
見えている人も、分かる人も、感じる人も………誰もが、その理を悟ってしまう時がくる。
それは、いたたまれなく寂しい。
誰にも打ち明けられないコトが沈澱していく。
打ち明けたいのに、話してみたいのに、怖くてできない。
沈澱していたそれらは、突然吹き上がって爆発を起こす。
しかしその爆発は、躱されるか叩き潰されるかされ、欲求を満たしてはくれない。
やがて人は瞼を塞いで、幽霊を見なくなる。自ら心を閉ざしてしまう。
イノセントな時、誰にでも幽霊は見える。
俺にも、見えていた。
ずっと小さい、子供の頃の話だが。
今では、汚い人間しか見えない。
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