05.暮らしてみましょう

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05.暮らしてみましょう

――記念すべき(?) 魔界生活一日目 どうやら魔界にも太陽はあるらしい。 カーテンの隙間から朝の眩しい光が容赦なく入って来る。 「…暑い」 魔界のこの時期は夏なのだろうか… あまりの暑苦しさに、的子は目が覚めてしまった。 重たい瞼をゆっくりと開く。 「………」 まず最初に視界に入ってきたのは、卸したての柔らかい白のベッドシーツと毛布。 そして次に入ってきたのは、(昨日出会ったばかりなのに)この世で一番嫌いになった奴の寝顔。 「……なんでいんの」 寝ている本人に思わず話かけてしまう。 今寝ているベッドはダブルベッドだが、昨日は確か一人だけで寝たはずだ。 なのに…… (…あたしが寝てる間に潜り込んできたのか) どうりで暑苦しいわけだ。 苛立ちのあまり、ボサボサの髪を掻きむしる。 (昨日は自分のベッドで寝ていたあたしを殺そうとしたくせに……自分はしても良いのかよ…) 寝起きの的子は普段よりもキレやすい。 (…じゃあ、あたしがコイツを殺しても良いってことだよね…) 的子はベッドの上に立ち上がり、気持ち良さそうに寝ているテオドールを、ベッドから思い切り蹴り落とした。 ガッ 「出てけ、変態!」 ドサッ (うわっ、痛そー) 見事に落ちたテオドール。 …が、 「……スゥ…」 「…………」 …………起きない。 「…………」 (……いや、ここは起きようよ) やっぱり、魔王は空気を相手にしないらしい。 蹴落としてやったのに、何となく切ない敗北感を味わった的子であった。
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