30人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「……追儺って、知ってるか」
「ついな……ですか?」
唐突に喋りだした銀時の顔を窺えば、まだ寝ぼけている様子。
きっと明日この話をしても覚えてないことだろう。
「節分のもとになった、中国の行事でよ……俺の生まれた村では、そっちをやってたんだが……」
寝ぼけながらとはいえ銀時の生い立ちについて聞くのは初めてだ。
いつもなら決して話してくれない内容だからと、姿勢を正した。
「あれだろ……節分てぇのは、豆……撒くだろ」
「はい」
「鬼は……追いかけられんじゃん…だから」
「……」
「矢が……痛いし、俺ァ……昔から嫌い、で」
だんだんまとまりが無くなってきた。
「銀さん、矢って?」
「だから……追儺じゃ豆の変わりに、矢で……」
―――鬼を射る。
.
最初のコメントを投稿しよう!