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「早く起きなさい!」
母親が自分の息子を起こす、どこにでもある光景。
小学校低学年くらいの男の子が、ふかふかのベッドの上で体を丸めて眠っている。
窓に掛かるレースのカーテン越しに朝陽を浴び、とても気持ち良さそうな表情をしていた。
「ほら、今日はお前が楽しみにしていた遊園地の日だぞ!葉流(ハル)ももうご飯食べ終わるぞ!」
父親も中々起きない息子に手を焼いているようだ。
父親が息子の眠っている部屋へ入って来た。
体型は痩せ型で丸い眼鏡を掛けている。
丸い眼鏡の中には、毎日睡眠時間を制限されたような疲れた瞳が二つ。
幻想の中を生きているような、現実と非現実を区別できないような目をして息子を見ている。
髪の毛もあまり健康的とは言えない。薄くなり、何のケアも施されていないように見える。
父親は息子が眠るベッドの上に腰を下ろした。
そして、眠っている息子の夢の中に届くように、囁き声で話し掛けた。
「陽太(ヨウタ)は葉流のお兄ちゃんなんだから、お手本になるように頑張らなきゃ。いつまでもお寝坊さんじゃいられないぞ」
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