渦巻きの中心で

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父親が陽太の居なくなったベッドの上で今日一日のイメージトレーニングをしていると、リビングの方から母親の声が聞こえてきた。 「あなたも早く準備しなさい!ちゃんとした身だしなみでいてもらわないと困りますよ!」 「はい、はい」 父親はいつもの口癖だと思いながら、母親の言葉を流すようにあしらった。 妻から見れば夫も大きな子供同然なのだろう。 そして父親は息子のベッドから立ち上がり、廊下を突き当たりまで進み洗面所へ向かった。 鏡の前に立ち、自分が良妻の旦那であることを他人に認めてもらえるよう、髪型や髭を念入りにチェックする。 どんなに時間を掛けて手入れをしたところで、この男の容姿が他人の目を引くことはないだろう。 何と言っても彼の妻は、この男を性格で選んだのだから。 それに気付いているにせよいないにせよ、この男のそういった天然な要素こそが、この男をパートナーに選んだ妻の決定的な最大の要因になっているのだ。
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