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父親が鏡の前で奮闘している間、陽太と葉流は食事を食べ終え母親も出掛ける仕度を終えた。
人間は年を重ねるほど時間を無駄にする生き物だ。
それはある一定の境界線を越えると表れる。
一日の生活をほぼ一人でやれるようになった人間は、必然的に時間の使い方を覚える。
そして年老いて一人での生活が困難になった人間は、使える時間をフルに使って生活をしていく。
今の陽太と葉流は、遊園地に行って活動するためのエネルギーを食事で蓄えるという単純な作業を、本能的かつ自発的に最短で行っているのだ。
そして父親は、生きていく上では然して重要性を持たない、身だしなみに時間を割いているのだ。
身だしなみを主観的に整えた父親は、家族の様子を窺い、壁に掛けてあった鍵を手に取り玄関へ向かった。
そして茶色のシューズを履き、玄関にある巨大な鏡の前に立った。
この日の父親の服装は、薄い緑のシャツに黒のチノパンという安そうな格好。
腕時計だけはなぜか異質で高級感に溢れている。
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