悲劇の主人公にしないで1

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「父さん、母さん。おやすみなさい。」 大正時代の日本。ここにボンゴレ家という名門貴族の家がある。名前こそはハイカラだが、実際には天皇の一族に一番近い家柄だ。天皇政治になってからは、天皇の右腕として活躍している。ボンゴレ家は所謂、通称で本来は沢田家…なのだが。そのボンゴレ家の跡取り息子、沢田綱吉、通称、ツナは当主の父、家光と実母の奈々に挨拶を告げると部屋に向かう。 「はぁー。今日もダメだな。疲れた。」 豪奢なベッドにツナは寝転ぶ。今なら、口うるさい家臣も家庭教師もいない。ツナはニヤリと笑い、部屋の奥から庶民の着物を出す。それに身を包むとこっそり屋敷から抜け出す。 ツナはつくづく自分は貴族には向いていないと思う。どんなに金があっても地位があってもツナは満たされることはなかった。ツナは夜の歌舞伎町に出掛けた。 「骸様。おなかすいた…」 「そうですね。今日は忙しかったですから…食べる暇はありませんでしたね。では、クローム。犬。千種。なにか探しに行きましょうか。」 歌舞伎町のスラム街に六道骸はいた。骸は物心ついた頃に起きた、大飢饉の影響を受け、没落した地主の息子だ。両親は病気で亡くなり、今は幼なじみのクロームと犬、千種と肩を寄せ合って生きている。どこかの店に盗みに入ろうかと骸は考えていると、蜂蜜色のホワホワした頭が目に入る。蜂蜜色の重力に逆らっているが、ホワホワした髪はこの辺に1人しかいない。名門貴族の子息…沢田綱吉だ。骸は思い付いた。この少年を利用すれば…自分達はのし上がれるかもしれない…骸は暗い笑みを浮かべ、綱吉の跡を付けた。骸のこの行動が、骸は愚か、綱吉の未来を変えることになるとは…誰も思わなかった。 続く
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