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「アカリに何をした―――」
召喚された水の精霊王は魔術陣を挟んで対の地点にいるアカリの正面に現れた。僕からは精霊王のただ巨大な背中しか見えない。
そんな中、精霊王はアカリに手をかざした。すると、アカリの胸元から丸い白い光が徐々に露出し、終いには精霊王の手元に収まった。
僕はその丸い光を見たことがあった。教科書に載っていた。アレは精霊の光だ。
それと同時に意図が切れた人形のように倒れ込み、もがき苦しむように胸元を抑えて痙攣している。
―なんだ、まだいたのか―
脳内に直接語りかけられてくる。ずっと話されたら間違えなく頭痛を起こすだろう。
「アカリに何をしたんだ!」
だけど今はそんなことに構ってはいられない。苦しんでいるアカリを助けることが先決だ。
―我を呼び出した代償を頂いただけだ。死ぬことはないから心配するな。代わりに今後一切の魔術の使用ができなくなっただけだ―
「……なんだって」
この世界で魔術が使えない?―――それは落ちこぼれの烙印を押されるも同然。実力主義のこの世界で魔術が使えないことは、即ち死を意味する。………そんな状態にアカリが?
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