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―往復の代償は頂いた。願いがあるなら叶えてやらんこともないぞ?もちろん代償は頂くがな―
願いを叶える――今、水の精霊王はそう言った。もしかしたら今、母さんを蘇らせて欲しいと言ったら母さんは蘇るかもしれない。
「じゃあ、アカリに精霊を戻してやってくれ!」
でも、それは僕とアカリ。二人が笑っていられる状況じゃなきゃ意味がない。魔術が使えないアカリを家が認めるだろうか?いや、認めない。
みんなが傷つく結末なんて僕は嫌だ。
―それは無理だ。既に小娘の精霊は我と一つになった。仮に我の一部を分け与えようにも我は水属性、小娘は光属性だ。そんな小娘に水の精霊を入れてみろ?拒絶反応を起こして死ぬのが目に見えているが構わないか?代償も高く付くがな―
精霊王の言っていることは全て正論だ。人の身体はモーターのようなもので、精霊はスイッチ。適所で接触すれば正しく作動するけど、他の場所だと動かなかったり、暴走したりする。
「―――なら、僕の精霊をアカリに移してくれ!」
僕も同じ光属性。移す分には問題ないはずだ。
―見上げた兄妹愛だな。良かろう……代償は、そうだな。サービスだ。どうせ使い物にならない霊覚を頂こうか―
そう言い終わると、精霊王は僕に手を翳し、精霊を抜き取った。激しい虚脱感に襲われたけど、アカリが無事ならそれで良いと思えた。
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