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喉が渇いた。
一本道の細い路地を進んで進んで、行き着いた先は何故か灰色の石造りの町だった。
今度こそ人が生活している様子は破片も無く、ただ石の建物が入り組んだ道を作っている。
横道も幾つか見掛けたが、入らず真っ直ぐに進んだ。
他より太い道を行けばいつかはメインの通りに着くだろうと考えたのに、どうやらその考えは間違っていたらしい。
目の前の古びた木製ドアを、穴が開く程見詰めて途方に暮れる。
思えば横に道が伸びていたのは最初の辺りだけで、もう長い事狭い一本道を歩いていた。
まさかこんな行き止まりが待っているとは思いもしなかった。
慣れない雪道と石畳を歩いた足は痛みと疲労を訴えていて、とても引き返す気にはなれない。
霧が出てきたのか、振り返った道は薄暗く霞んでいた。
こんこん、と二回ドアをノックする。
待っても返事が無いので、もう一度、今度は四回叩いた。
次も四回。
「すいません、誰か居ませんか? 」
訊ねてもやはり返事は無く、もう一度強めにノックしてから意を決してドアノブを捻った。
室内は薄暗く、簡素な家具だけでは本当に人が生活している場なのか判らず不安になる。
見付けた水道で喉を潤そうとしたが、水は出なかった。
確実に百年以上前の生活様式に見える。
簡素なテーブルに簡素な椅子が一脚、簡素なベッドに簡素で空の食器棚。
食器棚が空という事は、人は住んでいないのか。
少し、ベッドで休みたい。
薄い布団は固いくて寝心地が悪かったが、一度横になってしまうと身体が鉛の様に重く感じられ、起き上がる気になれなかった。
もし住人が帰って来たら謝ろう。
謝れば許してくれるかな。
つらつらと考えているうちに、喉の渇きも忘れて眠りに落ちていた。
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