最後の代走

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「この場面はお前しかいないんだ藤井。代走はお前だ」 監督と選手は声を揃えて俺に言う。 「アウトになっても誰もせめたりしねぇよ!」 「藤井!去年のリベンジ果たしてやれ!」 「俺が歩いてホームベースを踏ませてやる!」 チームメート達が俺にそれぞれのエールを送る。涙はもう拭いた。もう泣かない。 するとしばらくしてアナウンスから声が聞こえる。 「ピンチランナー。藤井くん」 その瞬間、大きな歓声が甲子園に巻き起こった。 周りからは韋駄天コールが巻き起こる。 どうやら観客達も俺を見捨ててなかったようだ。 たくさんの人たちに支えられて生きてきた。 場面は1アウトランナーは3塁。それは奇しくも去年の甲子園とまったく同じ舞台である。 もうアウトにはならない。 俺はこの義足で必ずホームベースを踏んでやる。 そしてチームを優勝に導く。
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