最後の代走

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それから時が経ち3年生になった藤井。今年こそは甲子園優勝を果たす。昨年の失敗を取り返す。数々の目標が彼の脳裏に浮かんでいる。 だが、事件が起きたのは大会の3ヵ月前であった。 交通事故であった。 スピード違反のトラックに衝突したのである。病室の上で、ただただ自分のスパイクを見つめている藤井がそこにはいた。 そう、彼は事故の後遺症で左足を失ったのである。 韋駄天とまで呼ばれたほど、走力が売りだった藤井。その足が失われた。 涙が止まらない。 すべてが終わった。 自分の生きがいを無くした。 数々の悲しみに襲われ藤井の精神力はみるみる衰えていった。 毎晩、事故の夢を見る。 野球のテレビを見るだけで頭が痛くなる。呼吸が乱れる。 もう…死んでしまいたい。 それさえ思った。 だがそんな藤井を助けてくれたのはチームメートであった。
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