最後の代走

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すると試合は勝敗が予想できないシーソーゲームとなった。 ウチのチームもなんとか相手チームに食らいついている。 選手がフルに活動する。どうしても相手に点差をつけてたまるものか、といわんばかり取られたら取り返す。試合に出てる奴も出てない奴も一致団結して戦っている。 そして回は9回裏。点差は5-5で同点。1アウトでウチのチームの3番を向かえる。 カキィーン 右中間に鋭い打球を放った。打者は1塁を回って2塁に向かう。 俺は外野手を見る。相手はクッションボールの処理にとまどっている。微妙なタイミングだ。だが行ける。 3塁ランナーコーチの俺は打ったランナーに必死にジェスチャーをした。 「こい!3塁いける!」 その声は打者に届いた。彼はニコッと笑いながら、2塁ベースを回る。 それと同時に外野からの中継が内野に回る。 3塁へ向かう打者。 内野手も3塁に鋭いボールを放る。 サザー 「セーフ」 大きな歓声が巻き起こった。1アウトからサヨナラの大チャンスを迎えたのである。 だがその歓声はあっという間に悲鳴へと変わる。 今3塁に到達したランナーが足をおさえうずくまっている。 喘いでいるランナー。 そのまま担架で医務室に運ばれた。 そこで審判はウチに代走を申し出たのである。
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