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「……はい何でしょうか? 十秒以内にお答えください、どうぞ」
レイルがクイズ番組の司会口調で尋ねた。
読者の皆様にはクイズ番組どころかテレビがねーよ、と断っておく。
「もう敵はウルフ二体だけですけど?」
二人の喧嘩中に敵はあらかた片付けられ、ウルフ二体しか残っていない。
敵は距離をとっていて、攻撃できる範囲ではない。
放って置いても逃走するだろうが、芽は摘んでおくに限る。
「よし、このまま一気に殲め――」
――つしようと続ける間際、二体の遠吠えが野に響く。
すると二体の遠吠えを聞いてか、一キロメートル程後方の森林から続々とウルフが現れた。
「……仲間を呼びはじめたけど……」
「……そうですね……続々と集まって来ましたよ」
森林の中から出てきたウルフ達は、ざっと数を数えても二十匹はいた。
一同は明らかに嫌悪感を漂わせるような表情を浮かべた。
その表情からは全くやる気が感じられない。
シャーネがおもむろに動く。
「……兄貴任せた。何もしてないでしょ?」
レイルの肩に笑顔で手を置く。
その笑顔の裏に何やらどす黒い物が伺える。
「嫌だめんどくさい。皆で頑張って」
その手を笑顔でつまんで落とすレイル。
笑顔の様子も裏に伺える物も、兄妹な為か全く同じである。
「出来ない事はないが、おまえがやるのが一番手っ取り早いからな」
苦笑いを浮かべ、会話に加わっていなかったマルスも言う。
「だって面ど……怪我人だぞ俺!」
本音を言いかけたが、やや必死な表情で頭の傷を強調する。
「体力は充分に残ってますし、そのくらいの傷、別にどうって事、無いですよね」
しかし、ルイまでが顔に不自然な笑みを貼付けてレイルを責っ付く。
その仮面の様な笑顔の裏には黒ではなく、闇の様な物を一同は感じた。
残念ながらレイルに選択肢は存在しない。
「……めんどくさいなぁ……でもやらないと帰れないしな……」
そういってレイルが面倒臭そうに前に出る。
そして顔を軽く叩いて気合いを入れ直す。
「めんどくさいけど頑張るか! コーヒーの為に!」
何がコーヒーの為になるか全くわからないが、気合いは入ったようだ。
彼の戦闘職は魔法に重点を置いた魔法戦士である。
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