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「まずは動きを止めるか、面倒臭いけど……」
先程入れた気合いは何処へやら。
とてもけだるそうにスタスタと近づいて行き、あくびをしながらレイルは詠唱をはじめた。
すると、レイルの周りで目に見えないものが動く気配がする。
ウルフは警戒しながらも、ゆっくりとレイルの周りを取り囲むように動きだす。
囲んで攻撃を狙う、お決まりの動きだ。
しかし、レイルは囲われるよりも先に詠唱を終える。
そして右手の平を前へ突き出し、呟く。
「スピットボール」
地面から無数の石が浮かび、ウルフの群れの方へと飛んでいった。
その様子はまるで小さな流星群。
しかしウルフ達は後ろに跳ねて難無く避ける。
そこでウルフの動きは止まり、そこへレイルが次の魔法を発動する。
「トルネード」
目に見えない空気の層がウルフを全頭取り囲み、回転する。
そしてレイルの飛ばした石も風に運ばれ、ウルフ達の周りを回り始めた。
つぶてが混じった風の渦は高く、ウルフの跳躍でも飛び越えられそうにない。
渦の高さは少なく見積もっても、十メートルはありそうだ。
風の勢いは強く、渦の周囲の物も自身へと引き寄せ取り込む。
それにより風の渦は壁と化し、くぐり抜ける事は不可能になった。
もっともそれ以前に抜けようとしても、吹っ飛ばされるだけであったが。
ウルフはじりじりと後退し、それに合わせて渦も縮む。
レイルが任意で渦の大きさを調整しているのだ。
そしてついに、ウルフ達は一箇所に集まる形となった。
獣の目には滅多に見られないような、怯えの表情。
ウルフはそのまま風に巻き込まれ、飛ばされるかと思われた。
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