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「おつかれ~。やっぱり兄貴の魔法はすごいね。久々に見直しちゃったよ」
シャーネが感心したように喋りながらレイルに小走りで近づく。
「いや少し頑張ればみんな出来ると思うよ。と言うか早くコーヒーを――」
「ほら頭の傷を治療しないと。早く詰め所へ戻りましょう」
コーヒーを要求するレイルの言葉を遮り、ルイが笑顔で言う、わざと。
「いや、だからコーヒー――」
「魔法使うと疲れるもんな。詰め所戻って休もうや」
ポンポンとレイルの肩を叩きながらマルスもにこやかに言う、わざと。
「……だからコーヒーくれっていってるだろう!」
当然ではあるが、話をはぐらかされたレイルは憤慨した。
それぞれが次々と口早に、言葉を遮る様に喋っていたので仕方がない事とは思う。
少しの間彼らは沈黙しシャーネが重たい口を開く。
「……コーヒー全部飲んじゃった、ごめん」
そういって頭を自分で小突き、舌を出してえへっと笑う。
レイルの飲んでいたコーヒーは、全て飲まれていてもう残っていないようだ。
それをはぐらかすために、シャーネ達は次々に声をかけていたようだ。
一人で飲んでいたレイルがずるいと言うのもあったであろう。
「なんでだよ! 俺のコーヒー返せよ!」
コーヒーは詰め所で入れたものなので、少なくとも『俺の』ではない。
しかしレイルにはそんな事は関係ないようだ。
皆のコーヒーは自分の物、自分のコーヒーは自分の物。
まるでかの有名なガキ大将理論である。
「コーヒー飲み過ぎですよ」
「俺らもたまには飲みたいんだって」
レイルは相当怒っていて顔が真っ赤になっているが、ルイもマルスも悪びれている様子は見られない。
むしろルイには微笑すら浮かんでいる。
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