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――ミールを囲む外壁の内側に、一軒家程度の大きさの建物がある。
年季が入ってくすんではいるが白い壁に、古いが厚くて丈夫な木の扉が付いている。
屋根は壁と同じ素材で、ほぼ平坦な陸屋根。
小さいアーチ状の木の窓が四方の壁に二つづつ取り付けられた、ごく普通の建物。
これが自警団の詰め所である。
魔物の襲撃等に備えて待機する場所だ。
詰め所の中は大きめの長テーブルが中央に一つと複数個の椅子。
白い清潔感のあるテーブルクロスがかけられている。
入口からすぐ右を向いた所に食器棚があり、中にはいろいろな食器が並べられている。
その左隣には茶などが入っている戸棚がある。
奥に向かうと左の方に台所、右の方に仮眠室が付いている。
仮眠室には二台の二階建てベッド、台所には一通りの調理器具がある。
トイレは外に個室がある。
もうほとんどただの家である。
そんな詰め所に一人の男が椅子に腰を掛けて、本を読んでくつろいでいた。
その男は背が高く、体つきもとてもがっしりとしてたくましい。
頭は坊主で顔立ちですら筋肉質、鼻にも一本線が通っている。
それだけで非常に強そうな印象を与えるが、常に半分閉じている寝ぼけ眼がそれらをすべて台なしにしている。
その時、ばんっと大きな音を立てて不意に入口の扉が勢いよく開いた。
そこには深刻な表情のレイルが立っていた。
それを男がちらりと横目で見るが、すぐに視線を本へ戻した。
「コーヒーはどこだぁああ!」
「そこ」
「どうもぉおおお!」
男は戸棚の下を指差す。
レイルは勢いよく戸棚を漁りはじめた。
男の名はフォース・ライト。
魔族であり元は旅人であったが、旅をしていてこの地を気に入り住み着いたそうだ。
今では戦いの実力を買われ、自警団のリーダーである。
戸棚を漁っていたレイルが振り向き様にフォースに問う。
「インスタントコーヒーない!? 今すぐ飲みたいんだけど!」
「ん? それなら俺が今使い切ったとこ――」
「んなぁああああ!」
レイルは悶絶した。
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