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「ってそういえば兄貴、頭まだ手当てしてないの? はやく治療しなさいよ」
シャーネは席に着きながらレイルに話かける。
着いてすぐに豆を挽きだしたレイルは、頭の傷をそのまま放置していた。
血は乾き髪が変な形に固まっているが、当の本人には痛みが無いようで全く気にしていない。
豆を挽き終わり、抽出に入るレイルがシャーネに言葉を返す。
「大丈夫だ! コーヒーには自然治癒能力を促進する効果が――」
「たぶん無いわよ」
レイルの言葉を遮り、ツッコミを入れるシャーネ。
実際、そんな効果は無い。
「俺は信じてる! コーヒーは万能薬だということを!」
気にせずコーヒー信仰もとい妄想を披露するレイル。
ここまで来ると彼には確かに効果があるのかもしれない。
「もしそうだとしたら薬を慢性的に摂取することになるから!」
それにまともな意見を持って対するシャーネ。
彼の感覚もおそらくただの気分であろう。
「でもコーヒーは嗜好品だから大丈夫だ!」
そして本末転倒。
自分で薬で無いことを証言した瞬間である。
「言ってる事がおかしいわよ! ……まあいつものことだけどさ……」
いつも振り回されている彼女にとっては、たいしたことではないらしい。
「……よし! とりあえずコーヒーできたぁああ!」
コーヒーがようやく出来上がり、その場で跳びはね回る歓喜の舞を踊るレイル。
かなり滑稽な姿である。
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