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その後は魔物の襲撃もなく、夜勤と交代した。
自警団の勤務時間は分かれていて、それぞれ深夜の十二時半から朝の六時、六時から昼の一時、一時から夜の七時、七時から深夜の十二時半の二十四時間無休だ。
レイル達はこの内、昼から夜の部に勤務している。
今日の彼等のお茶菓子はショートケーキ。
シャーネ、またはルイがよくお茶菓子を作る。
「兄貴さあ……前から気になってたんだけどさ……」
シャーネがやや言いづらそうにレイルに尋ねる。
「魔法を使う時に技名を叫んでるけどさ……何でなの? 恥ずかしくない?」
魔法を使うには技名を言ったり叫んだりする必要は無い。
さらに言うと使う時には、呪文や魔法陣などを使わずとも魔法を放てる。
起こしたい現象をイメージすればいいのである。
さらに効果を高めたければ呪文の詠唱や、魔法陣を使うがレイルにとっては使う必要がない。
それでも起こせる現象には限度があるが。
レイルは恥ずかしくないようで、普段の調子で答える。
「単純な理由だよ。声に出すとイメージがしやすくなるだろ」
例えば赤をイメージしたいときに、単に頭だけで考えるよりも声に出して言った方がイメージしやすいだろう。
それは魔法を使う時にも有効なようだ。
「そしてもう一つ、重要な要素があるんだ」
レイルが得意げな顔で話しをつづける。
「……それって一体なに?」
一つ目の答えが意外にもまともだったので、シャーネも真面目に聞く。
「それは……」
「……それは?」
レイルは無駄に溜めている。
最終解答の間ばりに溜める。
たっぷり三十秒程を費やし、ようやくレイルは口を開く。
「……技に名前とかついてたらカッコイイじゃないか!」
詰め所に響き渡る鈍い音。
非常にくだらない理由を聞いて、シャーネが頭をテーブルにぶつけた音である。
恥ずかしくないのは本人の気の持ち方のせいだったようだ。
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