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ある小さな家の小さな一室。
その部屋のベッドの上で眠っていた男が一人。
彼はゆっくりと目を開き、眼球を動かして室内を見渡す。
そして布団をまくり、むくりと上半身を起こす。
多量の汗をかいていたようで、背中に下着がぴったりと張り付いて気持ち悪さを醸している。
彼は頭を左手で掻き、眠そうに顔を歪めながらこうつぶやいた。
「……何度目だろな……これ……」
顔を歪めたのは、睡眠時間の不足によるものではないのかもしれない。
しかしその感情を彼以外の者にははかる事はできない。
彼がふと窓の外を見ると、星は見えなくなり空がやや白んできているのがわかった。
どうやら時は明け方のようである。
町はまだ静かで、眠りの中にある。
「……ねよ」
彼は大きくあくびをして、もう一度頭から布団を被り直し眠りにつく。
彼が再び夢をみる頃に、夜は少しずつ明けていった。
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