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雨など降った事がないのかと思われる程に晴れ渡る青空。
風に身を任せる白い雲。
遠くを見渡せば、複数の青々と繁る林がぽつぽつと存在する平原。
その平原を見下ろせる小高い丘に、少し風景に馴染まないような厚い石壁がある。
その石壁は何かを守る様に、囲む様にそびえており、正面には木製の大きな扉が付いている。
ここは辺境の町、ミール。
多種族国家、ライクスの領土内の町だ。
首都グルアークスから離れているという事もあり、領土、人口、交通等が少ない、いわゆる田舎である。
この大陸、アノマス大陸には四つの国があり、それぞれ
多種族国家、トーレス
天使族国家、フレイドル
魔族国家、テールリード
そしてこの国、多種族国家、ライクスがある。
トーレスとテールリードは交戦中。
フレイドルとライクスはそれぞれ中立を保っている。
今のところ戦況は五分五分だが、いつ均衡がくずれるかは時間の問題だ。
トーレスもテールリードも好戦的な国なので、相手国を取り込んだらいつかは攻め込んで来るだろう。
美しい景色が眼前に広がる町、ミールの入口……その前に、一人の武装をした男が立っていた。
身長が高く体型も普通だが、ボサボサの黒髪はあまり整えている様には見えず、見えているのかどうかわからないような細い目の奥には、かろうじて黒いものが見えるだけ。
顔の線はシャープで正直に言うと、美形。
身嗜みを整えれば様になるだろうが、今の姿のままではだらし無く、単なる間抜けにしか見えない。
「ああ……暇だなぁ……」
晴れ渡る空の下、男はそういってコーヒーをすする。
その表情は非常に恍惚とした表情であり、その幸せなあまり失神しているのではと思われるような顔をしている。
この男はレイル・キース。
この町の自警団に所属している。
人間と呼ばれる、創造的な種族。
そしてこの発言通り、彼はひどく無気力である。
『だったらたたかえぇええ!』
程近い所に人影がもう三つ。
今の声はそこからかかったもの。
補足させてもらうと、現在彼らは魔物と交戦中である。
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