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「だって俺がいなくても充分だろ。雑魚ばっかりだし」
それに面倒、と付け加え引き続きコーヒーをすするレイル。
そんなレイルに、一人の女が魔物と戦いながら話しかけた。
背中までかかる黒みがかった茶髪は、頭の頂上付近で束ねられたポニーテール。
大きく丸い目は透き通るような青だが、シャープな顔の線により、かわいいとも、綺麗とも言えるような顔である。
そのような可愛らしい丸い目も、今はつりあがっている。
「くつろぐな馬鹿兄貴! 数が多すぎて大変なのよ!」
シャーネ・キース。
レイルの妹であり、軽装の戦士である。
彼女はそう言い放ち、右手の刀身六十センチ程の片手剣で、体長一メートルはある狼、ウルフを切り捨てる。
「んーやっぱりコーヒーは美味いっ! おかわりっ!」
そんなシャーネの言葉を華麗にスルー。
カップは既に空になっている。
「聞いて無いのかこのあほぉ!」
シャーネは彼に向かって叫んだ。
その隙を狙ってのことか、子供の様な体で悪知恵が働く小鬼、ゴブリンが飛び掛かった。
それに気づいた彼女は、左手に持つ短剣で攻撃を防ぐ。
甲高い金属音が鳴り、続いて肉を断つ鈍い音がする。
右手の剣でゴブリンの首をとばしたのだ。
それをちらりと横目で確認したレイルは一言。
「おーすごいすごい」
無表情かつ、感情のこもらない声でシャーネを褒める。
そんなレイルの持っているカップにはいつの間に入れたのか、コーヒーの湯気が立っている。
「全く褒められた気がしないわね」
嘆息しながらシャーネは呟く。
「そりゃ褒めてな……いやすごいよ、俺には出来ない……かも」
本心を隠しかけ、さらりと自分も出来ると暗に宣言。
全く褒める気がないレイルである。
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