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「よく言うわよ……私は兄貴のような事出来ないよ……」
半ば諦めたような顔でシャーネが言う。
それは今まさに、レイルが行っている事を指している。
「そうか? ……いや頑張ればいける! ……はずだよ」
コーヒーを飲みながら答えるレイル。
しかし、小声で自信なげに付け加えた言葉が。
それを戦闘中にも関わらずシャーネは聞き取っていた。
「……今小声で『はず』って言わなかった? ……どちらにせよ出来ないよそんなこと……」
シャーネがそういう理由、それは……
二体の巨大な体をもつ怪鳥ガルーダ、その巨大な爪による爪撃をかわしきり、さらにその間にもおかわりのコーヒーを注いでいたからだ。
と言うか既に飲み終えていることも驚きだ。
それらの爪の間を縫うような流れるような最小限の動きを、すました顔でいとも簡単に行っている。
「それはお前のコーヒーに対する愛が足りないからだ! ……ったりして」
攻撃をかわしながらレイルが答える。
しかしその言葉の後ろには、またしても小声で否定的な言葉。
シャーネはその言葉をはっきりと聞き取り、
「さっきから否定的な言葉ばかりついてない? それにコーヒーがいくら好きでも、そんな芸当出来ないわよ」
正論をかえす。
全くもってシャーネの言うとおりだ。
しかしコーヒーを愛してやまないレイルは引き下がらない。
「貴様コーヒーを侮辱したな! いくら妹とは言えゆるさんぞ!」
「どの発言をもってそうなるのよ!」
レイルには被害妄想の癖でもあるのだろうか。
いや、コーヒーに関する言葉には敏感なのだろう。
それはともかく、シャーネは侮辱等という事はしていないのではっきりと否定する。
「世界はコーヒーを中心にまわっているといっても過言では――」
「まわってないから!」
戦場に響き渡るスパァンという小気味よい音。
いつの間にかハリセンに持ち替えたシャーネに、つっこまれるレイルだった。
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