暇だぁ……

4/22
前へ
/153ページ
次へ
「よく言うわよ……私は兄貴のような事出来ないよ……」 半ば諦めたような顔でシャーネが言う。 それは今まさに、レイルが行っている事を指している。 「そうか? ……いや頑張ればいける! ……はずだよ」 コーヒーを飲みながら答えるレイル。 しかし、小声で自信なげに付け加えた言葉が。 それを戦闘中にも関わらずシャーネは聞き取っていた。 「……今小声で『はず』って言わなかった? ……どちらにせよ出来ないよそんなこと……」 シャーネがそういう理由、それは…… 二体の巨大な体をもつ怪鳥ガルーダ、その巨大な爪による爪撃をかわしきり、さらにその間にもおかわりのコーヒーを注いでいたからだ。 と言うか既に飲み終えていることも驚きだ。 それらの爪の間を縫うような流れるような最小限の動きを、すました顔でいとも簡単に行っている。 「それはお前のコーヒーに対する愛が足りないからだ! ……ったりして」 攻撃をかわしながらレイルが答える。 しかしその言葉の後ろには、またしても小声で否定的な言葉。 シャーネはその言葉をはっきりと聞き取り、 「さっきから否定的な言葉ばかりついてない? それにコーヒーがいくら好きでも、そんな芸当出来ないわよ」 正論をかえす。 全くもってシャーネの言うとおりだ。 しかしコーヒーを愛してやまないレイルは引き下がらない。 「貴様コーヒーを侮辱したな! いくら妹とは言えゆるさんぞ!」 「どの発言をもってそうなるのよ!」 レイルには被害妄想の癖でもあるのだろうか。 いや、コーヒーに関する言葉には敏感なのだろう。 それはともかく、シャーネは侮辱等という事はしていないのではっきりと否定する。 「世界はコーヒーを中心にまわっているといっても過言では――」 「まわってないから!」 戦場に響き渡るスパァンという小気味よい音。 いつの間にかハリセンに持ち替えたシャーネに、つっこまれるレイルだった。
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

66人が本棚に入れています
本棚に追加