暇だぁ……

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この会話の間にレイル達が攻撃されている様子はない。 先程彼を攻撃していたガルーダ達はというと、血を流して地面に倒れている。 「こんな中で兄妹喧嘩ですか……余裕そうですね」 多少離れた所で本音をぽつりと漏らす男が一人。 その男は戦場には似合わないシンプルな柄の白いローブを着ており、肩から矢を入れる籠、箙(えびら)を下げて左手には長弓を持っている。 そう、ガルーダはこの男が射落としていたのだ。 首にもかかる金髪に穏やかで優しそうな印象をあたえる碧眼、やや高いすらっとした鼻で、少し面長であるが紳士的な外見をしている。 ルイ・パーライト。 天使と呼ばれる比較的聡明な種族であり、彼は弓術を得意とする。 弓術は遠距離戦で真価を発揮する。 しかしそのかわりに、近距離には別の対応が必要だ。 ニ体のウルフが彼に向かって疾走するが、彼には動く様子はない。 ウルフは目の前まで迫り、一匹が巨大な前足で彼を薙ごうとする。 その前足は、彼の遥か右の空間を捉えた。 ルイの左横から高速で接近した男が、その勢いのまま拳をぶつけたのである。 殴り飛ばしたウルフを、もう一体にもちゃっかりぶつけている。 その男の赤髪はルイと同じぐらい長さなのだろうが、かなり縮れていて同じ様には見えない。 一言で言えば天パである。 鋭くキリッとしている目は赤く、顔はややかくばり無駄な肉がついていなく、鼻筋も通っている。 高い身長とガッシリとした体格は、実に頼もしそうな印象を与えている。 「全くだね。しかもハリセンに持ち替えるなんて……何を考えているんだ?」 彼はマルス・ヒッター。 魔族と呼ばれる身体能力の高い種族であり、彼は格闘家である。 マルスとルイ。 遠距離はルイが請け負い、近距離はマルスが動く。 彼等の連携は抜群であった。 「しかし……」 ルイが眉間に皺を寄せる。 「いつも疑問に思うんだが……」 マルスも眉をひそめ頭を掻いた。 彼等の疑問とは何なのか。 『……あのハリセン、どこから出してるんだ(でしょう)?』 それはいわゆる企業秘密と言うやつである。
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