プロローグ

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―――王様っ!こちらです!早く! 21世紀のこの現代とは違うどこかの世界、どこかの国。 中世のヨーロッパを思わせる優美で荘厳なその巨大な城は、今まさに巨大な炎により崩れ落ちる寸前だった。生き物のような巨大な炎は燃え上がり、兵士たちの命を奪いつつ王の間に前進していく。 「うむ、やはりあの宝がある我が城が真っ先に狙われたか…」 王と呼ばれるその男は玉座から立ち上がり、剣をとり鎧をまとった。年はとっているが背筋はまっすぐに伸びていて良く見れば体格も立派。鎧姿が様になっている。 「王様!!ここは私めに!早く!お逃げください!」 若き兵は震えながらも王の前に立ち剣を構える。兜のせいで分かりづらいがよくよく見れば、兵はまだ十代半ばと言ったところで顔つきにはあどけなさが残っている。 そんな兵に王は微笑みを浮かべつつ静かに手をかざした。 「マロスティアス」 王が唱えたその言葉を受け、若き兵の姿は静かに消えた… 「お前は伝えねばならん。もはや一刻の猶予もなくなっていることを。そして生き延びろ。私には子も妻もいない。私一人が生き延びたところでもうどうにもならん。ならば若き可能性が生き延びるべきだ。」
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