銀髪男の来襲

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ホームルームが終わり、教室に騒がしさが戻ってくる。 1限目までの短い時間にだって、騒げるのが高校生ってもの。 受験生なのにも拘わらず、まだまだ時間はたっぷりあるんだと余裕を見せたいのか、それとも現実逃避したいのか。 この場合はおそらく両方。 進学率はそこそこな八雲高校では、3割程度の生徒は卒業後に就職を希望していて、休み時間まで使って参考書にかじりつく者はそれほど多くはない。 希良々もいつもなら静香や他のクラスメイトの輪に加わって、他愛ない話に花を咲かせるのだけれど、憐の登場に動揺しまくっていてそれどころじゃない。 憐が教室を出ていってすぐ追い掛けて、どういうことか説明を求めようかとも思ったけど、あと数分もすれば1限目が始まってしまう。 追い掛けたところで話をする時間はないと、今にも駆け出したい気持ちをなんとか椅子に縫い付ける。 「ほんっとラッキーだよねー、このクラスでさ」 教室で一際騒がしい女子の声が耳に入る。 「そーそー! 毎日比槻センセーと会えるんだもん。あー、あたし一生このクラスでもいいかも」 「分かる、分かる! あの顔ずっと拝めるなら、留年してもいいって思えちゃうよねー」 (え……? 今、なんて……?) .
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