242人が本棚に入れています
本棚に追加
/232ページ
ホームルームが終わり、教室に騒がしさが戻ってくる。
1限目までの短い時間にだって、騒げるのが高校生ってもの。
受験生なのにも拘わらず、まだまだ時間はたっぷりあるんだと余裕を見せたいのか、それとも現実逃避したいのか。
この場合はおそらく両方。
進学率はそこそこな八雲高校では、3割程度の生徒は卒業後に就職を希望していて、休み時間まで使って参考書にかじりつく者はそれほど多くはない。
希良々もいつもなら静香や他のクラスメイトの輪に加わって、他愛ない話に花を咲かせるのだけれど、憐の登場に動揺しまくっていてそれどころじゃない。
憐が教室を出ていってすぐ追い掛けて、どういうことか説明を求めようかとも思ったけど、あと数分もすれば1限目が始まってしまう。
追い掛けたところで話をする時間はないと、今にも駆け出したい気持ちをなんとか椅子に縫い付ける。
「ほんっとラッキーだよねー、このクラスでさ」
教室で一際騒がしい女子の声が耳に入る。
「そーそー! 毎日比槻センセーと会えるんだもん。あー、あたし一生このクラスでもいいかも」
「分かる、分かる! あの顔ずっと拝めるなら、留年してもいいって思えちゃうよねー」
(え……? 今、なんて……?)
.
最初のコメントを投稿しよう!