銀髪男の来襲

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こんがらがる思考を更にこじらせるような会話。 憐を『比槻先生』と呼び、まるで日常的に憐がいるかのような言い方。 希良々からしてみれば受け入れ難い状況を、みんなさも当然のように受け入れていて。 今まで受け持ってくれていた担任はどうしたのとか、憐を見たことないとか、そんな疑問が当然湧くだろうのに。 「ふぉーっ!! 本日もお美しいっ!!」 そこでまた、希良々を混乱の渦に導くセリフが。 希良々の後ろの席で、静香がデッサン専用ノートにペンを走らせていて。 そのノートには憐の顔がとても上手に描かれていた。 「し……しーちゃん。今、本日“も”って言った?」 夢中で憐を描いている静香は、手を止めずノートからも眼を離さずに 「それがどうかしましたかね?」 と、言ってのける。 「どうって……」 どう説明したらいいのか、と希良々は混乱する頭を捻る。 クラスメイトや静香までも憐を当たり前に受け入れていて、憐が担任じゃないなんて微塵も疑っていない様子で。 それはみんなが可笑しいのか、自分が変なのかの区別がつかなくなりそうで。 もしかしたら自分が憐を忘れてしまっただけなんだろうかと思いもしたが、憐が妖狐だと知っていたのが救いとなり、きっと何かの方法でみんなの記憶を操作しているんだろうと混乱しつつも結論付けた。 .
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