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「ぜーんぜん分からん」
憐は欧米人みたいに両手をパッと広げ、肩の辺りに持ち上げる。
「確かに我等一族はウカノのばーちゃんと契約結んで、五穀豊穣や、人々に幸せをもたらす手伝いをしたりする。……が!!」
すっと憐の手が希良々の顎へと伸び、掬い上げる。
「それはそれ! 男女の間のこととは別だ」
妖艶な眼差しに絡め取られそうな、そんなざわりとした感覚が希良々を襲う。
「それにだ。俺はまあ、規格外ってやつでだな。ウカノのばーちゃんに仕える義務はないのだよ」
「義務はないって……」
希良々はハッとして憐の手を再び払い退けると、浮かんだ疑問をぶつけた。
「まさか……神使じゃない……なんてことは?」
「ん?」
憐から妖艶さは遥か遠くへ飛んでいき、人畜無害そうな顔で首を傾げた。
「“ん?”じゃなくて……聴こえましたよね?」
希良々は嫌な予感がした。
この短い会話や、昨日交わした会話を思い出してみても、憐の口から一言も神使であると聴いていない。
そして巫女という職業柄、希良々の年齢にしては様々な人と接触する機会が多くあり、こういう人畜無害そうな顔をした人ほど実は裏があるのものだと知っていた。
僅かな希望と、抱いた予感がせめぎあう中、希良々は憐の返答を待った。
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