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「……神使……」
ボソボソっと話す憐。
「はい?」
希良々は耳の後ろに手を当てて、身体を傾け聞き返す。
「だから……神使じゃないと言えばないし、違うかって言われると微妙なところで……」
聞き返してみても歯切れの悪い言い方に、希良々は胡乱〈ウロン〉な目を向ける。
「つまり?」
「まー、なんだ。どっちでもいいじゃないか!」
『ハハハ』と渇いた笑いを漏らす憐。
ついに希良々の堪忍袋は限界が来た。
「違う……のね? 神使じゃないないのよね?」
スーっと希良々の周りの温度が下がり、憐から漏れる渇いた笑いは止んだ。
「えーっと……違うとなると何が変わるのかな?」
希良々自身、隠そうともしていない怒りのオーラは憐にも伝わっているらしく、憐は一歩、二歩と後ずさる。
ここへ来て、やっと自分のペースになったことと、我慢してきたものが沸々と噴射したのが相俟って、この場には似つかわしくない笑顔を作った。
その笑顔が憐の恐怖心を駆り立てるであろうことを、希良々は充分に理解していた。
「訊きたい?」
声色はどこまでも穏やか。
しかし、醸し出す雰囲気は不穏。
憐はプルプルと小刻みに首を横に振るが、それは聞き入れられることはなかった。
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