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「りょ……旅行に……」
憐は絞り出すよう声を出し、それを聞いた希良々は少しだけ力を弱める。
「旅行?」
「そ、そうだ! 旅行に行っているんだ!」
旅行に行ってるってどういうこと?
詳しく聞かなきゃ、と希良々は憐を解放する。
青紫色だった顔色が赤みを帯び、ゲホッと咳を零した憐は首を擦り椅子に腰を下ろした。
「今朝早くから、世界各地を回る旅に出掛けたよ。少なくとも半年は戻らん」
「は、半年!? なんで!? どーして!?」
「俺が手配したからだ」
詰め寄る希良々にまた首を絞められてはかなわないとばかりに、憐は口早に説明した。
既に定年退職をしたみどりちゃん先生の旦那さんとみどりちゃん先生を、憐が二人を旅行へ行かせたというのだ。
要点は分かった。けれど腑に落ちない希良々は顔をしかめたままだ。
「なんで旅行? それに半年って長すぎる。みどりちゃんの生活をめちゃくちゃにしたっていう自覚ある? みどりちゃんだけじゃない。私たちのクラスだってそうだよ。受験を控えてる子だっているんだよ?」
声を荒らげてはいないが不満を顕にする希良々に向かって、憐はふっと笑みを漏らした。
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