リナ(仮名) 24才

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 先程の安全剃刀のことがある。  私は最初に剃刀で軽く指を切ってみる。  簡単に血は出てはいないが皮膚が切れた。  私はこの剃刀を使うことに決めた。 「…………」  私は左手首に剃刀をあてて、手の平からおおよそ一センチ位離れた所を切ることに決めた。  私は決めた位置に剃刀の刃をあてる。 「…………」  後はこの剃刀を横に動かすだけ。  動かすだけ。  でも、私の右手は動かない。 ……なんで?  なんで動かないのよ!  私は死ぬの死んでこの悲しみから解放されるの!  それでも右手は剃刀を持ち、左手首に刃をあてたまま──。  手首を切るなんて簡単だと思った。  だから、私はリストカットによる自殺を選んだ。  いや、正確には自殺のやり方でリストカットが『一番お手軽』だと思ったのだ。  入水、走行中の電車に飛び込む轢死、飛び降り自殺、首吊り自殺、他にも自殺の方法はあるだろうけど私はこの程度位しか自殺方法を知らない。  私の知る限りでの自殺方法の中で私はドラマや漫画、小説等でよく出てくるリストカットを選んだ。  なのに私はその『最も簡単な自殺方法』と思っている自殺を実行すら出来ていない。
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