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……切るの。
……切るのよ、私!
……何のために剃刀を手首にあてているのよ!
……いくわ。
……手首を切って、私は死ぬの!
……この苦しい思いから解放されるの!
──結局、私が右手を動かすのに時間がかかった。
剃刀に力が、少しかかるようにして剃刀をゆっくりと左から右へ動かした。
切れた長さは三から四センチメートル。
切り終わるまでの間に私は初めてリストカットをするというのはどういう感じか知った。
一般的に意識しない内に怪我をするのとは違った。
私は剃刀に全神経を集中させる。
剃刀を皮膚に押し入れる。
まだ、痛くはない。
剃刀をゆっくりと左から右へ横へ動かしていく。
怪我をしたときの同じ痛みと同時に、痺れを感じる。
これが剃刀で切るということなのだろう。
私は痛みと同時に感じる痺れを感じながら剃刀をゆっくりと動かした。
ここで私は、手首を切ったという満足感をえる。
これで、私はこの苦しみから解放されると思った。
もう、悩まなくて済む。
全てのことから解放される。
私は、そう思っていたのだが、現実は違った。
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