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「…………」
剃刀で横一文字に切った左手首をジッと見つめる。
まだ、傷口はジンジンとしている。
切ってから少ししてから、ぷっくりと赤黒い血液が傷口から出てきた。
私の中で喜びがあふれる。
これで、『死』ねるのだ。
他の傷からも赤黒い血液が溢れてくる。
血液は重力に引かれて下へ向かう。
私は血液がフロアマットにつかないように部屋の中にあるティッシュで血液を拭き取った。
傷口の血液も拭き取ると次から次へと赤黒く鉄臭い血液が出てくる。
このまま、この傷から血がずっと流れ続けていけば私は失血で眠ったまま死ねる。
私の頭の中はもう、元彼やその元彼をとった女のことなどない。
あるのは『死』のみだ。
──何度か傷口の血を拭いていると血が出なくなった。
血を拭いていたティッシュを見ると八割から九割位は拭き取った血液に支配されていた。
──何故?
こんなに血が出たのに死ねないの?
ティッシュはこんなに血の色をしているのに!!
──足りない?
まだ、切り傷の深さが足りないの?
こんなに血が出たのに。
この深さじゃ足りないの?
私が切った深さは皮膚と少しの肉を切った位──。
それでも、それ、でも、足りない?
あんなに、痛い思いをしたのに──。
先程以上の痛みと痺れ──。
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