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「……」
私はもう一度、先程手首を切るのに使った剃刀を持つ。
剃刀の刃には切る途中で出血した血液がついていた。
私はこのままだと切れ味が落ちると思い、刃についた血液を新しい真っ白いティッシュで拭き取る。
──再度、先程横一文字に切った切り口に剃刀を入れる。
後はさっきと同じと同じ様に左から右に剃刀を傷口に添わして動かすだけ。
そう、また、あの痛みと痺れを感じなければならない──。
さっき、それに耐えて私は手首を切ったのだ。何を今更、臆する必要がある。
剃刀を左から右に動かすだけ。
それだけ。
それだけなのに。
それだけなのに。
何で右手は動かないの?
剃刀を左から右に動かすだけ。
そう、さっき作った傷口に剃刀をあてて剃刀を動かすだけなのに──。
──出来ないのだ。
剃刀を横に動かすという簡単な行為なのに──!
私は何で剃刀を手にした?
『死』を望んだから。
この世の苦しみから解放される為……だったはず。
なのに、私は第二刃を躊躇って、動かさない。
いや、動かせない。
さっき痛い思いをしたのに、また同じ……、それ以上に痛い思いをしないといけないの?
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