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口を尖らせ頬を膨らませるという可愛らしい怒り方をしながら、自分の席に戻る女子生徒。
彼女、東雲白馬(しののめはくま)は髪全体に掛かった天然のハネッ毛が特徴的な、眉目秀麗で溌剌とした留年生徒だ。大のオカルト好きで、日々変なもの不思議なものを求めてひた走っている。ただその偏った好奇心の強さと行動力が仇となり、学校側には問題児として認識されている。一部ではファンクラブが出来ていて、そこでは「白馬のお姫様」と呼ばれている。
「大人しくしてれば素敵な女性なのに……」
授業の準備を終えた希一は机に頬杖を突いて窓の向こうを見る。
「…………旧校舎、顔無し死体、殺人事件……面倒臭いことになりそうだな」
一人ぼやいて溜め息を吐く。
その視界に旧校舎は映っていないが、記憶と想像を織り交ぜた旧校舎をその眼は眺めていた。
* * *
「よし! じゃあ行こうか、希一クン!」
日付が変わる頃、白馬と希一は進入禁止のテープが張られた旧校舎前に居た。
「……いや、なんで僕まで巻き込まれてるんですか」
「希一クンはこんな夜遅くに女の子一人で出歩くのは危ないと思わないの!?」
「思いますから出歩かないでください。あと巻き込まないでください」
「どっちも無理!」
「……」
希一の訴えは一蹴された。
二人がこんな時間に旧校舎を訪れた理由は「真相を暴くため」と「呼び出されたから」。どっちがどっちかは言わずもがなである。
「さあ、解いてみせるわよ。この難題を! 会長の名にかけて!」
「つまり自分の名誉の為ですか」
「違うっ、えーと……会長の地位にかけて!」
「同じです」
「いいから行くよ!」
白馬は肩をいからせながらテープを跨いで旧校舎へ進入する。やれやれと溜め息を吐きながらも希一も後に続いた。
中はかなり暗く、窓から入ってくる月光だけが頼りとなる。
「ところで事件てどこで起きたんだろう」
「分かりません。下戸野先生からは、何の情報も含まれていない通達しかされてませんから」
「やれやれだぜ、まったく」
やれやれはあなたの方ですけどねと心の中で突っ込みを入れながら、白馬の後ろを少し離れて歩く。
「下はなんにも無さそうだし、上行ってみる?」
「まだ帰らないんですか?」
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