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「…ったく。緋桜はアイツを甘やかしすぎなんだよ。」
あの後、僕は笑顔のまま怒る怖い秀弥を宥めすかしつつ、桜歌をたしなめつつ、朝食をとり、僕たちは家を出た。
同じ高校に通う僕たち3人は登下校もほとんど一緒だ。たまに用事で別々になるが、桜歌を1人で帰らすことは、まず、ない。
「うるさい。お前こそ虐めすぎないでよ。」
「てめぇが甘やかしすぎるからだろうが。虐めじゃなくて躾だ。」
「お前の場合、反応が可愛くて虐めてるんだろう。躾は夢と僕がするからほっといてよ。」
2人で小さな悪態をつきあいながら、秀弥から逃げるように少し先を離れて歩く桜歌の後ろを行く。
「あ―あ―…、桜歌、秀弥に怯えてチラチラこっち振り返ってるよ。この馬鹿。怯えさせてどうするの。」
「馬鹿言うな桜歌バカ。お前、そんなに口悪いくせに桜歌の前ではなんであんな偽善者っぽいんだ。」
その言葉にハッと嘲笑してやった。秀弥と、自分自身に向けて。
「お前も桜歌バカだろう、馬鹿。馬鹿に馬鹿言って何が悪いのか僕にはさっぱり解らないね。偽善者ってなんだよ。というか、君に合わせてるから口が悪くなるんだよ。僕はもともと本来、ああいう口調だ。」
「…てめぇ……あの化けの皮何年被り続けてやがる。その素の本性を桜歌にばらしてやろうか?」
「…うるさい。……ばらすもなにも、僕だって意識してそうしてるわけじゃないよ。ただ桜歌や母さんと暮らしてるとなんか口調がうつってこうなるんだよ。あの娘の前だと気づくと特にそう。」
偽善ぶってるわけじゃないし、化けの皮なんてそんなものかぶろうとも思ってない。
もちろん猫をかぶってるわけでもない。彼女の前ではアレが素なんだ。
「……おかげでもうこの口調がくせになって困ってるよ。」
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