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「――………。」
秀弥はじっと黙ってこっちを見た。そしてチラリと前方の桜歌の方へ視線を一瞬やり、またこっちを振り向いた。
「……それは緋桜、…お前が…。桜歌を妹として見てねぇからだろう。」
けっして大きくない声だった。桜歌には聞こえないように秀弥が気をつけてくれたのだと解る、そんな小さな呟きに、心臓が嫌な音をたててなった。ガンガンと響く頭をどうにか冷静に保ちながら、僕も秀弥の方へと顔を向けた。
「……秀…?」
「………お前が――――………。……お前がまだ桜歌を血の繋がりがない義理の妹として見て、気を使ってるからだろう。」
秀弥はからかうかのように言って、馬鹿みたいなこと気にしてんなよ、と笑った。
「――…あ……―…ああ、…そう…だね…。そうかもしれない。気を付けるよ。」
そういう意味か…。と小さく安堵の息をはいた。秀弥にも…桜歌への気持ちは…気付かれてはいけないから。
「そうだぞ。てめぇに家族として認めてもらえてないなんてことになったら、それこそ桜歌がこの世の終わりとでもいうように泣き喚くだろうからな。
ま、それも楽しそうだが、恵美さんまで泣くのは勘弁してぇしな。」
家族として認めてないことはないんだけどね。…そんなことあったら確かに恵美さん―…“僕と”桜歌の母親…―も泣くだろうな。
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