舞い上がる桜に紛れ込んだ

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「ひおちゃーん……」 ガチャリとノックも無しに扉が開かれ、そこからひょっこりと覗くのは、情けない、泣き顔。 「……またなの…?桜歌…」 小さなため息を1つ吐き、チラリと視線をやってから机に向かっていた身体を椅子ごとそちらへと向けた。 嫌な予感はとまらない。…と、いうより、もうすでに日常茶飯事なことだ。 こちらとしては堪ったもんではない。内心少し憂鬱になりながらも、仕方ないので入ってくるように指示する。 ………まぁノックもしない(忘れる)妹は入室を許可しないことを気にもせずに入ってくるだろうが。 ペタリと裸足の足特有の足音をさせて部屋に入ってくる彼女の手には…枕。 「ひおちゃん……一緒に寝ていい?」 「……ひおちゃんって呼ばないでよ。君、何回言えば解るわけ?お兄ちゃんって呼びなよ。」 やはりか。粗方また怖い夢でも見たんだろう。と考えながら、すぐにでも追い返したくなる気持ちを抑え、何度目か解らない指摘をする。 「え―…。いいでしょ?ひおちゃんでも。」 「お兄ちゃん。」 「…………。」 「むくれても駄目。」 「………ひおう…?」 …涙目になりながら(なんでこんなことで泣くんだろう)見つめてくる“妹”の名前呼びに、苦々しい想いがこみあげる。 第一、お兄ちゃん呼びを強制するのは(強制できていないが)僕自身のためであるし、確かに彼女からすれば1歳しか差のない兄の呼び方など自由にさせて欲しいだろう。 …ひおちゃん呼びよりも呼び捨ての方が堪える。
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