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「………なんでお兄ちゃんじゃ駄目なの。」
「……じゃぁなんでひおちゃんじゃ駄目なの?」
……瞬間、ドクリと心臓が激しく鳴った。
――…言えるわけがない。“歯止め”のためだなんて。…言ったところで彼女がその意味に気づくとは思わないけれど。
表情も些か強ばってしまったかもしれないが、そこは天然な妹なのでごまかせるだろうと考えポーカーフェイスを多少ぎこちなく保つ。
笑え。優しく受けとめろ。“兄”として。
脳の指令に忠実に、顔に微笑みを浮かべた。
「……仕方ないな。…好きに呼べばいいよ。」
優しく言った言葉に彼女の表情がパァっと明るく笑顔になった。
このやりとりは何回やっても慣れない。彼女のこの時の笑顔ほど、…眩しくて愛しいものを、僕は知らない。
「ひおちゃん!ひおちゃん!」
調子にのって名前を連呼させながら抱きついてくる彼女を軽く小突いてから優しく受け止める。
抱きしめながら、腕の力を強めてきつく抱きしめてしまいたい気持ちを抑えていた。
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