舞い上がる桜に紛れ込んだ

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「……仕方なくだよ。明日からは自分の部屋で寝な。」 「やぁだぁ―!それに1人で寝るときもちゃんとあるも―ん。」 「…8割がた、僕のところでしょ…」 「いいの~!ねぇ早くひおちゃんも寝よ?」 もう何度目か解らない彼女とのこのやりとりに今日1番の深いため息を吐いてから、僕もベッドへと寝転んだ。 途端に桜歌がぎゅっと抱きついてくるのに、もう何度目か解らないため息を吐き頭を抱えたくなるのを堪えながら、布団を自分と彼女にかけてやる。 「…ったく……電気消すよ。」 「うん、おやすみ―…ひおちゃん…」 「おやすみ」 手元のスイッチで電気を消したあと、抱きついて離れない桜歌の頭を一撫でしてやると彼女はすぐに寝息をたて眠り始めた。 彼女の無防備さに信頼されているのだと感じる。 しかしその信頼に対して優越感や、喜び、愛しさを感じる反面、酷く、哀しみと切なさを覚えた。 「………人の気も知らないで…。」 当たり前だ。自分の言葉に自嘲にも似た苦笑を浮かべた。 知られないようにしているのだから。 ばれてしまわないように隠しているのも。 知られてしまっては困るのも。 …すべて、僕自身だ。 「………君は知らなくていい。知らないでいてくれ。」 ただ、1つ本当に望むのは。 「……おやすみ……今度は幸せな夢見ろよ。」 彼女の額に、1つだけ。そっと愛しさをこめてキスを落として。瞳を閉じて、幸せを望むたった1人の“妹”を、ぎゅっと、彼女を起こさないように気遣いながらも…強く、抱きしめた。 ただ1つ、本当に望むものは。 ………君の幸せだけなんだ。
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