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すでに食事――と言っても、配給されるのは棒状の乾パン二本と水だけだが――を終え、濁った眼をした男と、澱んだ眼をした男は、消え始めた照明を見て、会話を止めた。
別に照明が消えたからといって、大声を出したり、馬鹿騒ぎでもしない限り咎められることはないが、二人の体にも照明が消えたら寝るというルール、リズムが染み込んでいる。
二人が横になり、眼を瞑ろうとした時だった。
「よう、相変わらず死んでるな、お前等」
その声で二人は上体を起こすが、明らかに鬱陶しそうな表情を露わにする。
「何の用だ?」
「どっか、行け。エリート崩れ」
濁った眼をした男のぶっきらぼうな態度に続いて、澱んだ眼をした男が吐き捨てるように言った。
「……」
話しかけてきた男の顔が歪み、怒りの色が浮かぶ。
が、それは一瞬ですぐに消えた。
怒りの色は消えたが、男は飢えたような、何かを求めるような、妙にぎらついた眼をしていた。
「何だよ。折角、面白い話持ってきてやったのに。聞きたくないのか」
ぎらついた眼をした男はわざともったいぶるようにして、二人の気を引こうするが。
「結構だ」
「一人で寂しいなら、さっさと死ね。エリート崩れの嫌われ者が」
濁った眼をした男と澱んだ眼をした男の対応は、変わらず冷たいものだった。
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