【 一 】

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未だにテレビの中で、『何故、こんな事になったのだ?』と青筋を立て、必死の形相でやかましく喚く人間達。 『何故、こんな事になった?』だなんて、よく言うものだ。 その表情は、まるで本気で憤っているようにすら見える。 あまりにも迫真の演技過ぎて、笑いがこみ上げて来る。 こうなると予期しておきながら、金を稼ぐ為のネタとしてしか使わなかったのはあんた達だろ。 口先だけで、本気で止めようなどとはしていなかった。 テレビの前では激しく批判しておきながら、その裏では金をせしめ、全てを黙認していた。 どいつも、こいつも、偽善の仮面を被った詭弁者共だったんだ。 でも、それに気付いた時には全てが遅すぎた。 『異形』の姿をした人間達が町中を闊歩し始めていた。 テレビの中のこいつらが、『異形』の姿であればまだ少しは信じられるが、こいつらは『異形』の姿などしてはいないのだ。
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