プロローグ

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白いカーテン…白いシーツ…清潔さが目に見える部屋。 [TVつけましょうか?] 若い看護婦が私に布団をかけ直しながら言った。 私は静かに首を振った…横に目を向ける…。 色とりどりの花…太陽みたいに眩しい位のカラフルな色…お見舞いの品々。 [まるで楽屋みたい]…私は思った。 楽屋では花なんか気にしなかった。そんな余裕すらなかった。 今度こそ確実に死ぬんだわ…死にたくはなかった。 私は目を閉じた。 瞼には色鮮やかな花。 花の匂いが鼻孔につく。 カーテンが静かに揺れる音が聞こえる。 苦痛すら感じなくなったこの体なのに…やけによく視え、よく嗅げ、よく聴こえた。
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